最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)2589号 判決 1951年3月15日
本籍
東京都江東区深川平井町二〇四番地ノ一
住居
同所一丁目六番地
土木建築請負業
三浦富治
大正四年一月四日生
右に対する詐欺被告事件について昭和二四年八月三〇日東京高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は刑訴施行法二条に従い次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人南波杢三郎の上告趣意について。
第一点所論は、結局事実の認定、証拠の取捨判断の不当を非難するに帰し、法律審に対する適法な上告理由とは認め難い。
第二点詐欺罪において財物の所有者は、他人なることが明かであれば必ずしも具体的に何人であるかを判示しなくとも犯罪構成要件に欠けるところはない。原判決においては東京都江東区深川平井町二丁目一六番地食糧公団東京都深川支所洲崎配給所における係員と表示してあるのであり、且つ証拠説明によれば被害者が古川俊三郎であることがわかるから、詐欺罪の相手方の表示としては適法である。論旨は理由がない。
第三点主要食糧の不正受配については刑法に正条あるものは正条によるべきであるから詐欺罪が成立するときは刑法二四六条によつて処罰すべきであつて、所論のように食糧緊急措置令一〇条本文によつて処罰すべきものでないことは、すでに判例の示すとおりである。論旨は採るを得ない。
第四点所論は、量刑不当の主張で適法な上告理由とは認め難い。
弁護人藤井暹の上告趣意について。
原判決は、被告人の第一審における自白を唯一の証拠として事実を認定したと主張するが、自白の外に補強証拠と認め得るものが存在することは判文上明白である。論旨は採るを得ない。
よつて旧刑訴四四六条に従い裁判官全員の一致した意見で主文のとおり判決する。
検察官安平政吉関与
(裁判長裁判官 眞野毅 裁判官 澤田竹治郎 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)